研究内容

遺伝子発現制御機構の解明を目指して

私達の体は数十兆個という非常に多くの細胞から形成されています。そんな1つ1つの細胞がDNAからなる遺伝子を持っています。細胞内において、遺伝子の情報はまず初めにRNAに写し取られ(転写)、さらにRNAの情報はタンパク質に変換されることによって、初めて遺伝子は機能を発揮し、細胞は生命活動を行うことができます。このRNAが合成される転写の“速さ”の調節が破綻すると、生命機能の破綻を引き起こし、がんや白血病などの腫瘍性疾患や遺伝性疾患などを引き起こす要因となることがわかってきました。私達の研究室では、転写の“速さ”(転写伸長)の調節機構に着目し研究を行っております。

MediatorlはMed26(手)によってSEC(バトン)をPolⅡに手渡す

MediatorlはMed26(手)によってSEC(バトン)をPolⅡに手渡す

遺伝子の転写制御の研究分野において、ゲノムワイドなシークエンス解析によって、非常に多くのヒト遺伝子において転写開始直後にRNAポリメラーゼII(Pol II)が一時停止していることがわかり、遺伝子発現がPol IIの一時停止解除によって制御されることが注目されています。このPol IIの一時停止は転写伸長因子によって解除されますが、どのようにして転写伸長因子が特定の遺伝子領域に時期特異的にリクルートされ機能するのかに関して未知でした。
これまでの研究で、メディエーター転写複合体のサブユニットMED26が、転写伸長因子を含む複合体Super elongation complex(SEC)をc-MycやHsp70などの腫瘍関連遺伝子領域にリクルートし、Pol IIの一時停止を解除することがわかりました。【Takahashi H, et al. Cell 2011】(図参照)。さらに、Med26に結合するもう一つの転写伸長因子複合体Little elongation complex(LEC)も同定し、Med26がLECをsmall nuclear RNA(snRNA)などのnon-coding RNA遺伝子領域にリクルートすることを明らかにしました【Takahashi H, et al. Nat Commun 2015】。
このように、MED26は2つの異なる転写伸長因子複合体SECとLECを、それぞれ異なる種類の遺伝子領域へとリクルートし、それらの遺伝子の転写伸長を促進することで、細胞の分化や増殖、腫瘍や遺伝性疾患などの疾患メカニズムにも関与することがわかってきました。当研究室では、MED26による転写制御機構を明らかにすると共に、MED26による幹細胞分化や細胞増殖の制御機構、さらに、その破綻による腫瘍や遺伝性疾患の発症機構の解明を目指して研究を進めております。

RESEARCH 1

細胞極性の調節機構に
着目した研究

細胞極性という生物学的な概念の確立、その分子機構の解明を行っています。現在、この研究は、細胞極性の分子機構という基礎研究から、前がん病変モデルマウスや腎症のモデルマウスの作成、乳腺組織幹細胞やがん幹細胞の増殖制御の分子機構など、臨床医学に直結する新たな展開を多数生んでいます。

RESEARCH 2

RNA品質監視の
分子機構の研究

遺伝子変異や転写のスプライシングのミスに由来する異常なmRNAが有する毒性から細胞を守る仕組み(RNA監視機構:NMD機構)の研究を進めてきました。RNA監視機構は、がん幹細胞や幹細胞におけるゲノムと遺伝子発現を統御する機構の一つでもあり、様々な未解明の問題が残されています。現在、これらの成果を踏まえて、がんや遺伝性疾患の治療に向けた創薬開発も進めています。

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